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その頃。東十条教授は珍しく神田博士からの電話を受けていた。その内容は、神田博士の罪滅ぼしの様な気分から、気まぐれで掛けてきてくれた警告であった。 「なるほど、あの細胞がアメリカに知れたという事ですか。」と、東十条教授が言った。 「まあ、根本君が頼っていたのが、どうもアメリカの下っ端だったようで、今頃になって、ロシアにまで情報が流れて、他の主だった国にあれが知れてしまったようでね。でも、同時にバラライカと呼ばれた君が造った事と木口一族の話もくっついているので、大きな国は手出しをして来ないだろうがね。でも、反米思想を中心とした小国や、場合によっては反社会的勢力なんていう団体からは狙われるかもしれないかな。」と、神田博士が言った。 「そうですか。でも、実際はあれが欲しいのはアメリカの筈なんですけどね。彼らも似た種類の細胞を持っているようですから。」と、東十条教授が言った。 「そうなのか。でも、アメリカが木口一族に関っているものには手を出さないだろう。なにせ、彼らの一部では、今でも日本が飢えるのを恐れている節があるからな。」と、神田博士が言った。 「政治から何から、日本は生かさず殺さずが理想ですか。木口一族から経済に何かあった場合を考えてしまうというわけですね。」と、東十条博士が言った。 「今更、日本人が侍になれる筈もないのにな。」と、神田博士が言った。 「ふふ・・・侍は特にアメリカ人にとっては驚異的思想形態ですからね。」と、東十条教授が軽く笑いながら言った。 「確かに、戦前戦後とやらに侍は居たけどね。バブルで全滅してるだろう。」と、神田博士が言った。 「でも、どんな時も暴れずに暴動を起こさずに耐える日本人の姿は怖いらしいですからね。」と、東十条教授が言った 「エブリバディー・サムライ・か。まあ、冗談はさておき、気をつけるんだな。」と、神田博士が言った。 「ええ、今日はありがとーーーです。」と、東十条教授が言った。 電話の受話器を置いてから、東十条教授は萩田一之助の話を思い出しながら考えた。そもそも、萩田一之助が持っていて、香織から皆に広まった生体構成物質は、萩田一之助が宇宙船の中の社会を追放された時に自分と地球人の肉体にいきなり使用した結果、萩田一之助は木口家の始祖になったわけであり、アメリカが持っているであろう細胞は既に宇宙人と思っているであろう人工生物になった後の細胞で、性質は解っても、地球の人間に使用出来る物とは考えていないであろうし、その様な実験すらしてはいない筈なのは想像が出来た。即ち、似ていても、アメリカは自分達が地球の人間に使用出来るレベルでの生体構成物質を所有していないと思い込んでいるのは間違いなさそうであった。それでなければ、わざわざニュースの様に密かに世界に広がる話題ではない。おそらくアメリカは、東十条教授の技術的問題であるとして、その技術が欲しいが為にあえて、不完全な情報を流したのではないか。東十条教授は、この数ヶ月で、あの生体構成物質を作り出す事は出来ないが、萩田一之助も加わった事で、全く何の細胞も取り込んでいない現物を手にして、その性質はほとんど把握していた。東十条教授は、恐れるべき事態は萩田一之助とあの生体構成物質の原液ともいえる存在が情報としてアメリカに漏れる事であった。その為には、今迄通り、日本の組織も騙していかねばならない事を考えた。 「はあ・・・・・・」と、気分が重たくなった東十条教授は溜め息を着くと、研究室の休憩スペースに行って大杉警視の前でソファーにダイブしてクロールで泳ぐ真似をして気分を紛らわし始めた。 それから、しばらくして。警察署の中では千里が優香の脚の傷跡を見て鳥肌を立てていた。 「うああ・・・痛そーーー。なのに、私達って、そのズル剥けてる皮を被せたら治っちゃうんだもんね・・・」と、千里が言った。 「ええ。でも、皮が落ちていたら大変でしたね。取りに戻らなきゃいけないとこですからね。」と、優香が自分の足に皮を貼り付け直して、ふーふーと息をかけた。 その時。東十条教授に事の次第を携帯電話で伝えていた桜子が戻って来た。 「で、教授はなんて言ってました?」と、千里が桜子に聞いた。 「んーー。べつに、放っておいてもいいって言っていたわよ。なんか、世界中の主だった組織とやらに、アタシ達の存在がバレてるみたいで、これから忙しくなるかもだって。もちろん一之助さんが元宇宙人なのと、あれの原液があるのだけは絶対にバレたら拙いらしいんだけど。それ以外は仕方ないからよろしくですって。」と、桜子が言った。 「まじですか、それ。」と、千里が言った。 「て゛、何で私がいきなり追いかけられるんですか。どう考えても、狙うんだったらボーってしている香織さんでしょう。」と、優香が言った。 「あー。それ、香織を命より大切な親友だと思っているアタシに対しての挑戦状?」と、桜子が優香に言った。 「いえ違いますよ。でも知り合って、こないだから思ってるっていうか、感じてるんですけど、なんで桜子さんて、香織さんの事を自分の命より大事に思っているんですか。」と、優香が訊いた。それを聞いて千里も、 「ああ、それ、共振とかのせいか、香織さんの話題が出た時とかにふって感じるんですよね。」と、言った。 「まあ・・・色々あったのよ。付き合いが古いとね。子供の頃に木口家所有の文化財から重要文化財になりそうだった壷を割った時に身代わりになってくれたり。そんな文化財が保管されている蔵があって、その蔵そのものが文化財だった木口家の蔵を全焼させた原因がアタシのしでかした事が発端だったとか言わないでいてくれたり。木口家本家母屋全焼事件でついに家に居づらくなって、アタシを頼って家出して来てくれたのに、とどめを差す様な事をしたりして。それでも、友達って笑ってくれた香織に心を動かされなかったとしたらアタシは鬼よ。人間だったら命をかけて親友だっていえる人間がいてもいいじゃない。」と、桜子が言った。 「はあ・・・なんか、壮絶な人生があったみたいですね。」と、優香が言った。 「でも、重文候補破壊とか文化財全焼とか、先輩って、大杉さんからグレてたとは聞いてましたけど凄い事したんですね。それを香織さんが責任を取ってくれたんですか。」と、千里が言った。 「まあ・・・短くすればそうなるけど、アタシがグレたのはそんな事があった後で、グレなきゃやってられなくなったからよ。」と、桜子が言った。 「はあ・・・でも、凄いですね。私はよく解んないけど、重要文化財って大切なものなんですよね。そんな物をよく割る勇気がありましたね。」と、優香が言った。 「いや・・・事故だったのよ。っていうか、思い出話しましょうか。」と、桜子が言った。 「え。聞かせてください。」と、千里が言った。 「じゃあ、重要文化財候補の壷を割った時の話からしましょうか・・・」と、桜子が話し出した。 「あれは、小学校の頃で、アタシはこっちの学校じゃなくて、母に連れられて本州の木口の本家があった街に行っていて、香織と幼稚園から同じ学校に入れられていたのよ。それで、雨が降ってる日だったのね。アタシはいつもの様に香織と一緒に木口の家に遊びに行ったのよ。そしたら、その日に限って玄関の上がりに壷があって、てっきりアタシ達は傘立てかなって思って傘を差したのよ。今、考えたら変だけど、小学生だったからさ。それで、二本傘を斜めに入れたらバランスが崩れてゴロンとその壷が倒れたわけ。そして、見ている前で、壷自体の倒れた勢いで、丁度傘の柄の所を中心にゴロゴロって扇状に転がって、ギリギリ上がりの縁から土間に落ちて見事に割れたのよ。そしたら、香織が、割れちゃったねって言って、アタシの傘を拾ってアタシに渡してくれたのよ。その時に玄関の外に居た背広姿でタバコ吸っていた人や木口の小父様が走って来て。大騒ぎになっちゃったわけ。」と、桜子が言った。 「はあ、すると、その壷が重文候補だったわけですか。」と、千里が言った。 「ええ。で、現場に残されていたのが、土間で割れている壷と、まるでそれを叩き割ったかの様に床に置かれた香織の傘で、最初に傘立てだから傘を入れようって言ったのはアタシだったのに、そんな事あの子一言も言わないで、木口の小父様に叱られて、最終的には、話の途中で家に引っ込んだ木口の小父様とその合間に外でタバコを吸っていた大人達が、みんなで目を離したのがいけないって事になったんだけど、割ったのは香織って事にされちゃったわけよ。」と、桜子が言った。 「うわあ・・・なんか、それ香織さんらしいですね。」と、千里が言った。 「それから、蔵を燃やしちゃった時も、アタシがお気に入りの綺麗なスーパーボールを蔵の中に飛ばしちゃって、それを探しに香織と蔵に入ったのよ。まあ、木口一族本家なだけあって、重文候補が出る位の物がある蔵が何個も建っていたわけだけど、丁度、その蔵の電気が漏電していて、直しに来るまで誰も入るなって言われていたらしいのよ。でも、普段、蔵なんかに入らない香織には誰も言ってなかったらしくて、スーパーボールだから蔵の中でも跳ねてどっかに行っちゃっていて、電器を点けて探したわけよ。そしたら、一階の天井裏から火が出て・・・何億円のお宝が燃えたらしくて・・・そん時も、言ってない方が悪かったって木口の小父様が香織に言っていたんだけど。傍で見てたら怖くて。香織もなんで蔵に入ったか聞かれても言わないし・・・それで、その後も、色んな小さな事が重なって。アタシが悪い事でも全部が何故か香織に被さって。そのうえアタシ以外でも香織の弟さんの修一郎さんの悪さとか、学校のクラスの誰かが仕出かした事とかまで、全部が真面目な香織に被さって行くのを見ていて、その理不尽さとアタシのした色んな事が重なって、いつの間にかアタシの心が耐えられなくなってしまっていって・・・ね・・・」と、桜子が言った。 「なるほど、それでグレるっていう方に逃げたんですか。」と、千里が言った。 「ええ。そう・・・でも、あの日から・・・あの間違いがおきた日から、アタシは香織に命を預けるって決心をしたのよ。」と、桜子が言った。その時。横で聞いていた優香が、 「そ・その間違いって?」と、おそるおそる桜子に訊いた。 つづく と、いうわけで、今日からまた各地の天気が大荒れ。 私の住む街でも時々雪でした。 なんだか、一番面倒な降り方でした。 猫さん達は餌が違うとハンガーストライキをおこすし、おかげで忙しい中餌を買いなおしに行かされて・・・ 今迄なんでも食べていたじゃないですか。 何が、今回はきにいらなかったのですかー。 などと、話せない猫さん達に言ってもはじまりませんね。 それにしても、食べない餌もあるんですね。 では、今日の猫さんはポチコです。 カメラの音に気付いても、結局、眠いポチコです。 |
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どんどん展開が大きくなって、どきどきしながら拝読しています。 |
兼業主婦 2012/02/09 00:23 |
兼業主婦さんへ |
さえこてつし 2012/02/10 02:25 |
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